私は鈴木といいます。二十七歳、宅配食材の配達をしながら、ごく普通に暮らしている人妻です。
結婚して五年、夫は朝早く夜遅い仕事。私は仕事と家事の繰り返しで、心も身体も空っぽになっていました。そんなとき、同じマンションの隣に住む青年――佐藤さんと出会いました。彼は二十八歳、穏やかで清潔感のあるサラリーマン。玄関先で食材の受け渡しをするとき、いつも柔らかく笑う人でした。
ある日の夕方、私はシャワーを浴びたばかりで髪を濡らしたまま、彼の部屋に届け物をしました。急いでいたから、Tシャツにジャンパースカート、そしてブラもつけていなかった。
彼が支払いをしているとき、カウンターの上に透明なボトルを見つけた。
「これ、なに?」と何気なく聞くと、「足裏のマッサージ用ジェルだよ」と優しく答えた。その一言で、なぜか心がほぐれていく感覚があった。
冗談まじりに「私にもやってくれる?」と口をついて出たのは、ほんの出来心だった。
床にバスタオルを敷き、私は寝転がった。彼の指が足裏に触れると、冷たいジェルの感触に続いて体の奥から何かが温まる。押し返すような指の力が脚を伝って、知らない場所を刺激してくる。
「気持ちいいわ…ねえ、時々してくれません?」
言ってから、自分で頬が熱くなった。けれど、彼の手は止まらず、ふくらはぎ、膝上へと静かに動いた。
そのとき、私は息を吸い込んでしまった。
「うん…ふっ…」
抑えきれず漏れた声に、自分でも戸惑う。心の中では“いけない”と何度も訴えていたのに、身体はもう違う場所を求めていた。
彼は私の背中や肩を押し始めた。服越しでも、指の温度が伝わる。張りつめていた全身の緊張が、一気にとけていく。
「こんなに気持ちよくていいの?」と口走ったときの自分の声が、まるで他人のもののようだった。
彼の手が脇の下に入った瞬間、ブラをしていない胸の柔らかさが逃げ場を失い、ふと触れた指先に小さく震えた。
視線を逸らしたまま、私はそのまま身を預けていた。
ジェルが太ももに塗られ、スカートが少しずつめくり上がる。冷たいはずの液体が、なぜか火のように熱く感じられた。
「えっ…」と小さく息を呑んだときには、もう身体は彼を拒むことができなかった。
彼の指が、紫の下着の上からなぞる。パンティ越しの刺激は、想像以上に鋭くて優しかった。
「だめよ…」と声にしたけれど、本心では「そのまま続けて」と言いたかった。
ゆっくりと撫でられながら、私は目を閉じた。暗闇の中で、息づかいと鼓動だけが響く。
「上もする?」
彼の声にうなずいた瞬間、私は理性を手放した。
仰向けにされ、Tシャツがめくられる。冷たいジェルが胸に垂れ、硬くなった乳首を包む。円を描くような動きに合わせ、喉の奥からかすかな声が漏れた。
「我慢しなくていいよ、リラックスして」
その言葉が、遠くで囁かれた魔法のように響く。何度も頷きながら、私は快感に身を任せた。
そしてそのまま、彼の指が下へ向かう。パンティを外された瞬間、空気が冷たく触れたかと思えば、次の瞬間、彼の舌が触れた。
「え…そこ…?」
最初の一舐めで、全身が跳ねた。唇が花の芯を包み込むように優しく動き、舌の先端が小さく弾むたび、腰の奥が勝手に突き上げてしまう。
情けないほどあっけなく、最初の波が押し寄せた。
「あ…あっ、もう…」
頭の中が真っ白になり、目の裏で光が弾けるようだった。
けれど、彼は止まらなかった。
再び舌を這わせ、吸い込み、唇を押し当て、まるで私のすべてを味わうようだった。指は胸を探り、舌が核を捕らえた瞬間、また新しい波がやってきた。
「ダメ…そこ強すぎる…」と訴えたはずなのに、身体は逃げるどころか彼の手を求めていた。
どれくらい続いたのだろう。私の中は熱でとろけ、息も絶え絶え。ジェルが全身を滑り、触れられるたびに感覚が増幅していく。
やがて彼の指が、背面の小さな穴に触れた。
「そこはいや…でも、こんなの初めて…」
恥ずかしい言葉が口から漏れ、涙が出るほど敏感になっていた。
何度目かの絶頂のあと、私は彼の腕を掴んで、「もう入れて…お願い」と言ってしまった。
でも彼は少し笑って、「それはまだ」と耳元で囁いた。その声が優しくて、なぜかほっとした。
その夜、十回以上も波が来て、そのたびに世界が壊れて再生するようだった。
終わったあと、私はシーツの上で汗まみれのまま息を整えながら、ぼんやりと天井を見つめていた。
「アナタ…、ごめんなさい」と心では思っていたのに、身体はその余韻をまだ求めていた。