平日の昼、彼とばったり会ったとき、「ごはんでも行こう」と誘われた。
軽い気持ちで「奢ってくれるなら」と笑って返したけれど、心のどこかでこの先の展開を期待していた。
車に乗って、見慣れない道に入ったとき、予感は確信に変わった。
「こっち、ホテルの方だよね?」
そう言うと、彼は少しだけ笑って、「そっちに行こうかな」と答えた。
胸の奥がチクリと痛みながらも、口では止めようとは言わなかった。
ホテルの部屋に入ると、現実感が一瞬でなくなった。
換気扇の音と、微かなシャンプーの匂い。
落ち着こうとタバコに火をつけたとき、彼の指が私の太ももに触れた。
ピクンと身体が反応した。胸の奥が熱くなる。
「久しぶりに、こういうとこ来た」
声が少し震えていた。
彼の手が腰に回り、唇が頬に触れる。
首筋をなぞられた瞬間、呼吸が浅くなる。
「やだ…」と小さく言いながらも、彼の手を止めることができない。
胸に伸びる指先、ボタンがひとつ、またひとつ外され、空気が肌を撫でていく。
ブラの上から親指で突起を擦られ、電流のような感覚が走った。
「感じてる?」と囁かれ、顔を背けたいのに、身体は素直に反応していた。
シャワーを浴びて戻ると、彼はベッドで私を待っていた。
シーツに隣り合って座った瞬間、唇が重なり、思考が全部溶けた。
背中を押されるようにベッドに倒れ、視界の端で自分の脚が開いていくのが見えた。
乳首に舌が触れ、湿った音を立てながら吸われた。
「そこ、だめ…」と呟いても、舌は遠慮なく動く。
下腹部がきゅっと締まり、自然と腰が浮いた。
「すごい濡れてるね」と囁かれ、頬まで熱くなる。
指先が触れた瞬間、ぬるりとした感触が広がった。
「そんなに…してほしかった?」
返事ができないまま、小刻みに息を漏らす。
舌が下腹をなぞり、中心に達したとき、声が勝手に漏れた。
「アンッ…そこ、もっと…」
舌先が敏感な部分を弾くたび、体温が一気に上がっていく。
そして、彼が顔を上げて「フェラしてあげる」と言った瞬間、逆転した。
彼のモノを手で包みながら、唇を滑らせる。
苦味と熱。欲望の匂い。
飲み込むたび、喉の奥が熱く震えた。
頭を撫でられた瞬間、変な安心感が胸を満たす。
「今度は俺の番」
背中を押され、仰向けにされる。
先端が触れた瞬間、身体が反射的に逃げたが、彼の両手が腰を抱いて押さえた。
「力抜いて」
その言葉で、すべてを委ねた。
一瞬の痛みのあと、奥まで侵入してくる熱。
「やだ、そんなに動かないで…」
言葉とは裏腹に、腰が勝手に追いかけていた。
打ちつけるたびに、ぐちゅっと濡れた音が響く。
「グチョグチョだね」と耳元で囁かれ、「言わないで」と泣きそうな声で訴えた。
でも止められない。
恥ずかしさよりも、埋め尽くされる快感のほうが勝っていた。
手首を掴まれ、腕をシーツに押さえつけられた瞬間、身体の奥が跳ねた。
「中はダメ…お願い…」必死に口で言っても、腰は正直だった。
彼が激しく突き込むたび、頭が真っ白になり、声にならない声が漏れた。
「だめ…イク…!」
背中を反らせ、熱が一気に頂点まで突き抜けた。
射精の瞬間、彼は息を荒げながら私を見つめていた。
その視線に、支配と優しさが同居していた。
「出した?」と聞くと、悪戯っぽく笑って「嘘だよ」と言われ、思わず笑ってしまった。
その瞬間、罪も痛みもどうでもよくなった。
2回目の逢瀬では、彼の指示で手首を後ろに回された。
背中に冷たい空気。腰を持ち上げられ、後ろから貫かれる。
「やだ…そんな格好…」と言葉とは裏腹に、もっと深くを求める音がしていた。
突き上げのたびにベッドが軋み、彼の腰の熱が伝わる。
胸をシーツに押しつけられながらも、身体の奥は完全に快楽に負けていた。
「イッちゃう…!」
涙が滲み、息を乱しながら絶頂が波のように押し寄せた。
終わったあと、シーツに顔を埋めたまま、動けなかった。
「意地悪」
そうつぶやくと、彼が笑って「Mっぽいね」と囁いた。
「そうかも」
初めて、自分で自分を認めた気がした。
歳を聞かれたとき、「39」と答えるのが少し誇らしかった。
「娘が来年20になる」
そう言うと、彼は驚いた顔をした。
でも私は、ほんの少し嬉しかった。
母でも妻でもなく、“ひとりの女”として見られた気がして。
ある日の再会。
部屋のテレビで縛られた女が喘ぐ映像を一緒に見ていた。
彼が耳元で言った。
「今度、手首縛ってみようか?」
迷いながらも、「…いいよ」と返した。
心の奥で、“もっと壊されたい”と思ってしまった。

