主人が亡くなってからというもの、夜が長かった。隣に人の気配がないだけで、こんなに寒く感じるのかと思った。シーツの端に残る空白を見つめながら、何度も涙が零れた。二年経っても、あの喪失感は薄れなかった。
一周忌の日、親友だった彼が来てくれた。いつものように仏壇に手を合わせ、静かに線香を立てる姿を見ていると、胸が締めつけられた。
「奥さん、大丈夫?」
その一言で堰が切れた。私は笑いながら話した。主人が海外で亡くなった本当のことを知ってしまった、と。現地の女の家で、裸のまま。そんな話をしながら、自分の声が震えているのがわかった。
「自業自得よね」――そう言った直後、彼の腕が私を包んだ。あたたかかった。久しぶりに、体温を感じた。
「子どもは二階で寝ています。……優しく抱いて」
唇が触れた瞬間、心が壊れた。抵抗も理性もなかった。ただ、あの孤独を埋めてほしかった。彼の手が背中をなぞり、下着の中へと滑りこむ。そのたびに息が漏れた。久しく感じていなかった熱が体の奥に灯り、腰が勝手に動いた。
「いけないことだ」と思えば思うほど、もっと深くを求めた。
布団に倒れ込み、胸を吸われるたびに、今まで抑えていた渇きが音を立てて崩れていく。
「奥さん、声が……」
「いいの、聞こえないから……もっと」
その言葉の通り、彼の腰が私の中で激しく動いた。何度も、何度も。生ぬるい汁が混ざり合い、シーツが濡れる音しか聞こえない。体の奥からあふれる声を押し殺しながら、私は彼の腕にすがった。
「中は……」
「いいの、あなたのが欲しいの」
そう言った瞬間、彼が震えるように私の奥へ流し込んだ。温かさが広がり、涙が滲んだ。何かが報われたような錯覚だった。
それからというもの、月命日が近づくたびに私は落ち着かなくなる。夜、彼が来る時間になると、仏壇のある部屋に布団を敷いて待つようになった。仏前で線香を焚いたあと、背後から抱きすくめられる。
「今日も、抱かれに来たんですね」
そんな囁きに、体が素直に反応した。衣擦れの音、唇の重なり、指が秘部をなぞる感触。息を合わせるたび、もう彼なしでは眠れないことを思い知らされた。
行為は次第に激しくなっていった。
子どもが祖母の家に行く日は、仏壇に手を合わせたあとラブホテルに行った。シーツの上で何度も絶頂を迎え、汗と涙と吐息が溶け合う。彼に覆いかぶさられ、胸を強く揉まれながら、「もうだめ」と言いながらも腰が止められない。
あのとき私は、夫ではなく女として生き返っていた。
そして三回忌。息子を送り出し、彼を家に呼んだ。夕飯の支度を終え、布団を並べた部屋に主人の位牌を置いた。
「今日は、ここで……」
そう告げると、彼は黙って抱いてきた。仏壇の前で繰り返される行為は、罪と救いの混ざり合う儀式のようだった。何度も、何度も。止めなければいけないのに、私は彼の温もりなしには生きられなくなっていた。
抱かれるたび、自分の中に流れ込むものを感じながら、心のどこかで夫に「ごめんなさい」と呟く。だがその声は、いつしか「ああ、もっと」という声に変わっていた。
彼の動きが止まり、私は汗に濡れた胸を押しつける。呼吸が交じり、身体は小刻みに震える。
「また、来てくれますか……いつでも待っています」
そう言って微笑んだとき、私は完全に堕ちていた。寂しさに、彼に、そして、この罪に。
