大学三年の春、僕は二十歳を過ぎたばかりだった。塾講師や家庭教師のバイトは何度か経験があったけれど、今回担当することになった〇〇くん宅には、初めて訪れた瞬間から不思議な緊張感が漂っていた。理由ははっきりしている――彼の母親、知的で美しい人妻、彼女の存在がどうしても気になって仕方がなかった。
初対面の彼女は、落ち着いた声で「よろしくお願いします」と丁寧に挨拶してくれた。フォーマルなワンピースに身を包み、年齢を感じさせないしなやかさ。世間的には「40代半ばの主婦」だろうが、僕にはすべてが新鮮だった。人妻特有の色気って、こういうものかもしれない。彼女を見るたび、心がざわつくのを抑えられなかった。
本来なら、生徒を伸ばすことだけに集中すべきだ。しかし、週に一度訪れるたび、彼女が何気なくコーヒーを淹れてくれたり、微笑みかけてくれたり、肩越しに柔らかな香りが漂ってきたりする。僕の内側に「この人の女らしさをもっと知りたい」といった、理性を超えた感情が生まれていた。
ある週末、指導を終えた後、僕は居間で彼女と二人きりになった。普段より長めに雑談をした。「成績が上がってきたのは先生のおかげですよ」と言われ、まんざらでもない気持ちになる反面、どこか背徳感も伴う。「いや、〇〇くんが頑張っただけですよ」と言いつつも、彼女の柔らかな微笑みが僕の胸をかき乱した。
その日の帰り道、「次はもっと彼女と深く話したい」という危険な期待が膨らんだ。僕が家庭教師を辞めるべきか、自問する瞬間もあった。でも、彼女のことが好きだという想いをもう抑えきれなかった。
数週間後のある夜、彼女から「よかったらご相談させてほしいことが」とメッセージが届いた。僕は前よりも早足で彼女の家に向かった。「今後のこと…」話題は息子の受験に関する話かと思ったが、会話の流れで自然と僕が抱えていた本音を告白してしまった。「…〇〇くんのお母さんのことを、女性として見てしまっています」
一瞬、時が止まったようだった。彼女は驚いたように僕を見つめ、しばらく言葉を返さなかった。しかし、僕はもう引き下がれない。「もし迷惑なら、家庭教師も辞めます」と言いかけた時、彼女は静かにうなずき、ふっと微笑んだ。
数ヶ月後、〇〇くんが志望校に合格した日、彼女から「よかったらお祝いに食事でも」と誘われた。二人でレストランへ行き、普段は話せないプライベートや夫婦生活についても自然と会話が弾んだ。食後、駐車場で別れ際、「一度だけ…」と僕は声を震わせて頼んだ。「一度だけでも、あなたを抱きたい」と。彼女は戸惑いの表情を見せながらも、静かに僕の車に乗った。
ホテルへ着き、部屋に入る。今にも心臓が破裂しそうだった。彼女が「慣れていないから」と浴室に向かう。その間、僕はベッドの上でいろんな思いを巡らせる。人妻と二人きり、しかも家ではない場所――非現実のような背徳感。「これが本当に現実なのか?」と自問しつつ、全身が熱く火照っていた。
彼女がバスタオルを巻いて戻ってきた時、初めて見る大人の女性としての危うい姿に、息を呑んだ。最初はぎこちない雰囲気、その中で僕が「ありがとう」と呟くと、彼女は微笑んで「こちらこそ」と返してくれた。一緒にベッドに潜り込み、互いの身体が自然に近づいていった。
僕の手が彼女の滑らかな太ももに触れた時、彼女は少し驚きながらも拒否しなかった。寝ている姿を横目で見つめながら、ブラジャーのホックをそっと外す。彼女の息遣いがわずかに荒くなった瞬間、もう理性は限界に近かった。女性としての彼女の身体は、若い僕にはあまりにも魅力的すぎた。
互いの肌を重ねるうちに、彼女が僕の耳元で小さくささやく。「初めてよ、夫以外の人に触れられるの」その言葉に全身が震えた。欲望と不安、背徳と高揚、そのすべてが混ざり合いながら僕は彼女の素肌に唇を這わせた。
彼女の身体はゆっくりと濡れていき、僕が指で優しく触れると、恥ずかしそうに身体をくねらせた。「入れても…いい?」と問うと、小さくうなずく。「本当にこれっきり、約束してね」と恋人のような目で見つめられ、僕は「もちろん」と応える。避妊具を付ける間もなく、素肌同士が繋がる感触に、初めての快感が体中を貫いた。
彼女は最初、小さく痛みを訴えたが、やがて僕の動きに身体を委ねてくる。若い僕の勢いに驚きながらも、抱きしめられることで女としての悦びが溢れていたのだろう。交わりが深まり、やがて最高潮に達した時、彼女が初めて力を抜いて全身を僕に預けてくれた。
「出したい…どこ?」と聞くと、「なかで…いいわよ」と小さく返事が。若さに任せてすべてを放った瞬間、彼女の身体から温かな体液が溢れ出す。それを見ながら「こんな光景、ビデオでしか見たことない」と声が漏れた。彼女は恥じらいながらも優しく微笑んで、僕を包み込んでくれた。
最後、ホテルを出て家の近くで彼女を降ろした。「ありがとう」とだけ告げて別れた。あの日を境に、彼女とは二度と会わなかったが、背徳と幸福が入り混じったあの夜のことは、今も鮮明に心に残っている。
大人の女としての色気と母としての優しさ、その両方を知ることができた一夜――あれが僕の人生で最初で最後、不倫という名の禁断体験だった。
