夫が単身赴任して半年。
最初は寂しさも頑張りで埋められたけど、子どもを寝かせたあと、静まり返った部屋で自分の体温だけが浮いている夜が続くと、皮膚がじわじわ欲しがるのがわかる。
鏡の中に映る自分は若くも老けてもいない、ただ中途半端に女を休ませている人妻。
その夜も蒸し暑く、肌にTシャツが張りつくような気怠い夜だった。
隣の彼の奥さんが旅行で留守らしいと聞いて、思わず口から出た。
「良かったら、うちでご飯どうですか?」
たったそれだけ。
でも、あの一言で、何かが動いた。
キッチンで野菜を炒めながら振り返ったとき、彼の視線が私の肩口に落ちたのがわかった。
黒のブラの紐が少し見えて、わざと直すふりをしたとき、心のどこかがくすぐったくなる。
久しぶりに男性の目を意識した。
笑い声と子どものはしゃぎ声に紛れて、湿った空気だけが二人の間に残る。
「奥さんは、旅行中なんですよね。」
「ええ。自由でいいですよね。」
そんな他愛のない会話の奥に、微かな挑発が混じる。
目が合うたび、身体の奥の柔らかい部分が反応していた。
入浴の時間、汗ばんだ体を湯気の中に沈めて、鏡越しに見える自分の胸を見つめたとき、彼の視線を思い出した。
湯から上がったあとの自分の体が、妙に艶っぽく感じられる。
子どもたちの世話をしてくれる彼の手つきが優しくて、ふと「この人、奥さんにも同じ手を向けるのかな」と考えてしまう。
わざと薄いタンクトップを身につけてリビングに戻った。
彼の目に熱が宿るのが見えた瞬間、意識的に胸を張る。
タンクトップ越しの突起が、自分でもわかるほど主張していた。
「……綾さん、濡れた髪、色っぽいですね」
その声が耳に刺さった。
ああ、もう引き返せないかもしれない——そう思った。
子どもたちが眠りに落ち、部屋に漂う静けさが二人きりの空気を濃くする。
「もう少し飲みませんか?」
彼の誘いに、返事をするより先にグラスを差し出していた。
冷酒の香りと一緒に、吐息が近づいてくる。
お互いの伴侶の話——浮気、距離、寂しさ。
彼の「妻が浮気してるかもしれない」という言葉が、熱に満ちた毒のように心の奥に広がった。
気づいたら私も口を開いていた。
「うちの旦那も……。最近、様子がおかしいんです。」
そこから先は早かった。
彼の手が私の手に触れた瞬間、全身に電流が走った。
呼吸が詰まり、唇が近づく。
拒む隙もなく、柔らかく触れ合った唇に舌が滑り込んだ瞬間、何かが壊れた。
タンクトップの上から胸が揉まれ、乳首がたちまち硬くなる。
シャツと肌の間で摩擦が起き、その刺激が脳を痺れさせた。
「や…だめ……子どもたちが……」
そう言いながら、腰が勝手に前へ動く。
乳首を舌に捕まれ、軽く噛まれるたびに、息が漏れる。
口から出る声を抑えることもできず、ソファの背もたれを指で掴んだ。
ふくらんだ胸を揉まれながら、下着の上から指先が奥へ忍び込んでくる。
最初に触れられた瞬間、体が勝手に跳ねた。
そこは、誰にも触れられず、乾いていた場所。
でも、指が少し揺れただけで、すぐにぐちゅりと音を立てて濡れた。
「ここ、こんなに…」
彼の囁きで、羞恥と欲の境界がなくなる。
もう抵抗できなかった。
パンティを膝まで下ろされたとき、腰の奥が勝手に開いていくのがわかる。
舌がそこに触れる。
ひと舐めごとに、熱い筋が走り抜けて、膝が勝手に震える。
「やめて…そんなのだめ…そこ…」
声を出すたび、舌が意地悪く奥をなぞっていく。
腰が持ち上がり、背中が弓なりになる。
名前を呼ぶこともできず、ただ息だけが漏れた。
熱の中で、自分の手が彼の髪を掴み、押しつけていた。
もう、“いや”と口にしながら快感を求める体になっていた。
立ち上がると、彼のズボンの膨らみがはっきり見えた。
指先でその上を撫でると、彼が小さく息を吸った。
下着を下ろすと、硬く勃ち上がったものが目の前に現れた。
見上げたまま、唇を近づける。
先端を舌で舐め、口の奥に含むと、熱と重さが息に変わる。
「気持ちいい?」
そう問うと、彼はただ無言で頷いた。
唇を上下に滑らせながら、舌を絡めて根元まで吸い上げる。
その反応を感じるたびに、自分の下腹が疼いて止まらなかった。
我慢できずにソファに押し倒される。
「大丈夫。もう、始まってるから……」
自分でも信じられない声が出た。
彼がゆっくりと押し入ってくる。
その瞬間、体が悲鳴のように弾けた。
久しぶりの感覚に、頭の中が真っ白になる。
「動いて……」
そう呟くと、彼の腰が打ちつけられた。
ぬるりと満たされ、奥まで突かれるたびに、快感が波のように押し寄せる。
抱きしめられると、胸と胸が擦れて、乳首がまた硬くなる。
彼の息が首筋にかかる。
「もっと、もっと……」
理性が完全に溶けていった。
汗で滑った肌が触れるたび、体の奥で快感が跳ね返る。
どれくらい動かれたのか分からない。
頭の中はただ、熱と音だけ。
「いく……だめ、いく……!」
彼の腰の動きが乱れ、同時に私の体も震えた。
唇を噛みながら、背筋まで走る震えを抱きしめた。
終わった後、ソファの隙間を風が通り抜けた。
乱れた髪を整えたくても、指が震えてうまくいかない。
「……もう、帰らないと」
そう言った彼の横顔は、さっきまでの熱をすべて脱ぎ捨てたように冷たかった。
静まり返った部屋で、私は裸のまま立ち尽くした。
脚の間を夜風が通ると、まだ湿った匂いが残っている。
罪悪感よりも、体の奥に残る余韻の方が強かった。
胸を触れると、もう一度誰かに抱かれたいような寂しさがぶり返す。
鏡の中の私は、笑っていた。
壊れた女の顔で、でもどこか満たされた笑み。
その夜、私は確かに——“嘘の共感”に抱かれて女に戻った。
