受験が近づいた。俺は一日10時間以上勉強した。が、実質はそれほどでもなかった。
頭に、別のことがいつもあったからだ。Mちゃんのこと、Sさんとの関係が泥沼になりそうな気配を感じること。
夢中になって勉強してるときは良いが、ふと我に返ると、いつの間にかそんな事を考えていた。
受験が済んだ。合格発表まで、時間がある。きちんとしている受験生は、ここで手を抜かない。
が、俺はMちゃんとデートしたりし始めた。つくづく自分を馬鹿だと思う。
久し振りのデートに、彼女は嬉しそうだった。
俺も、彼女と道場で会うだけでは物足りなかったし、彼女と一緒にいられると思うと、わくわくした。
俺達は原宿に行った。そして、代々木公園や明治神宮を散歩しながら、色々話をした。
俺達のことを、彼女と仲の良い女子道場生はもう知っているという。俺は別に不快ではなかった。
これからは、もっと堂々と恋人同士という感じで歩けるな、と思った。
並んで歩くだけで、どうしてこんなに幸福になれるのだろうか、充実した時間なのだろうか。
色々なお店を冷やかしながら、時には小さな買い物をしながら、彼女は嬉しそうだった。
そんな彼女を見ているだけで、俺も嬉しかった。
短答式試験が終わったという解放感もあっただろう。
いつしか彼女と俺は腕を組み、彼女の胸の感触を肘に楽しみながら、歩いていた。
彼女も、胸を俺の肘に押し付けてきた。ふとしたことで、肘をぎゅっと胸に押し付ける。
もう少し密着して歩きたかったが、そうすると歩けなくなる。
夕食は渋谷だった。渋谷まで歩いてきていた。俺の初体験の場所だ。
Sさんと歩いて、ある程度勝手の分かっているところは、ここしかなかった。
夕食を済ませ、軽くお酒を飲んで、俺は彼女と歩き始めた。
それまでのたわいもない話が途切れがちになり、彼女の目は真剣になった。
ホテル街に入ったのだ。彼女の腕に力が入った。
見ると一件の小奇麗な門のホテルがあった。俺は、彼女の髪をなで、「入ろうか?」とささやいた。
彼女は、黙っていた。
俺がホテルの門をくぐると、彼女は俺の腕を放し、門の外に立っている。
「どうしたの、おいで」と声をかけると、彼女は俺の腕をむんずと掴んで、外に連れ出した。
そして、黙って速足に歩き始めた。俺は引きずられるように付いて行った。
俺は、このまま駅に向かって歩いていっても良いと思った。が、彼女は別方向に歩いていた。
彼女はふと、立ち止まった。少々息が荒い。少し先に別のホテルの門があった。
腕を組んだまま、俺は彼女の腰に手を伸ばし、彼女の身体を俺の身体の側面に柔らかく固定した。
歩きつつ、ホテルの門の前を通った。彼女の目を俺は見たが、硬い表情で、一瞬俺の目を見て、また視線をそらせた。
俺は優しく方向をホテルの門に向けた。彼女は身体を固くし、逆らう様子を見せたが、俺の意志が固いのを見てか、もう逆らおうとしなかった。
初夜の時よりも、彼女は遥かに緊張していた。
部屋に入り、彼女にシャワーを浴びるように伝えた。
俺は彼女が愛おしかった。ホテルの中なのに、俺の息子は余り元気がなかった。息子は正直で、彼女を単なる性欲の対象として見ていないのだ。
俺は自分のこんな反応が、驚きであった。
彼女を抱かずに帰っても良いかな、と俺は思った。
彼女はバスからなかなか出てこなかった。そこで俺は裸になり、バスに入った。
Mちゃんはバスの中に浸かって背中を向けていた。俺は彼女に近づき、背中に優しくお湯をかけてあげた。
彼女は俺に背中を向けながら、しくしく泣いていた。「どうしたの、哀しいの?」彼女は顔を左右に振った。「恥ずかしいよう・・・・」
蚊の鳴くような声だった。
俺は彼女の顎に手をかけて、顔をあげさせた。涙で頬が濡れている。俺は、彼女に優しく口づけした。長い長いキスだった。
キスの後、2人は見つめあった。彼女は涙に潤んだ目でぎごちなくほほ笑んだ。
彼女を先にバスから出して、俺は入念にシャワーを浴びた。
俺がバスから上がると、彼女はベッドに一人横になっていた。
下を向いて、眠るでなく、俺を見つめるでなく、半眼で横になっていた。
布団をはぐと、彼女は浴衣を着ていた。パンティーも、ブラも付けていた。
俺が彼女を愛撫する。浴衣をたくし上げ、パンティを見ると、あそこにしみができていた。
太ももからお尻に向けて愛撫を繰り返す、小さなしみははっきりと濡れに変わってゆく。
身体を起こし、上を向かせる。ブラを外し、浴衣の前を開き、パンティを脱がせた。
彼女は今にも泣きそうに見えた。唇が震えつつ、ヘの字になっている。
彼女の肉体を眺め、俺は触り始めた。張りのある肌。鳩胸なので、乳房はそれほど大きくない。
彼女の乳房を優しく触り、乳首をつまむ。もう一方の乳首は口に含み、舌で押し付けるようにしてなめ回した。
彼女にとって前回は、酒の勢いがあったのだろう。今回は酒が入ってはいたが、ごく少量だった。
「私は禁酒しようと思うの」と彼女は言っていたのだが、無理に少々飲ませてしまったのだが。
うっすら汗をかいた彼女の肌を俺はなで回し、舐めた。
そして、彼女自身に手を伸ばした。
前回は、酔いも入っており、形状などはっきりと意識せずにインサートしてしまったが、
今回はじっくりと触ってみた。
Sさんのそれと比べる。随分個人個人で違うものだと思った。
Sさんは毛が薄く、クリトリスも小さかった。入り口も肛門寄りだったが、
Mちゃんはクリトリスが大きく、小陰唇も小さかった。なぜ小さいのかと不思議だった。
それは、彼女がいわゆる上付きだったからだろう。
俺は彼女のあそこをじっくり眺めたわけじゃない。あの時代にはAVなど無かったし、
その意味でテクニックを学ぶことが難しかった。俺はSさんから教えてもらったものしかない。
Sさんの反応を見ながら、みようみまねで学んでゆくしかなかった。
Sさんは俺自身を舐めたり、自分のものを舐めてもらうなど好まなかった。
俺も当然そんなものだろうと思っていた。
あそこの形状について書き込めるのは、ほとんど全て指で感じたことだけだ。
Mちゃんは、息を荒く弾ませていた。胸が大きく波打っている。
俺が彼女のあそこに指を伸ばしたとき、彼女は両足をぴったりとくっつけた。
「恥ずかしいの?」俺が聞くと、彼女はこっくりと頷く。
「大丈夫だから、力を抜いてごらん」俺は優しく誘導した。
彼女はおずおずと力を抜くが、抜ききれない。
「イヤなの?」彼女はかぶりを振る。が、なかなか力が抜けない。無理強いすることもできない。
そっと両足を広げようとしても、力が入ってしまうので、片足だけをゆっくりと外側に広げた。
「愛しているよ」と俺が言うと、彼女は無言で俺を見つめる。つぶらな目には涙が溜まっていた。
片足も一定角度以上には開かない。それ以上だと力が入る。ちょっと無理な体勢かな、と思った。
俺はそれでも彼女に身体を重ねた。それからSさんと同じあたりに息子自身を押し付けたが、無い。
下にずらすと、肛門になってしまう。「変だな」と思ったが、今度はずっと亀頭を上げてみた。すると、予想よりずっと上の方で
俺自身が彼女の中に滑り込んだ。
彼女の足は片足が伸び切り、もう片足がかすかに開いている。それでもインサートできた。
俺がゆっくり動くと、彼女は「はー」と息を吐いた。
俺がゆっくり動くたびに、彼女の身体のこわばりはほぐれていった。
足もきれいに左右に開いた。彼女は感じるまでには至らない。
充分濡れてはいるけれど、息を弾ませてはいるけれど、それだけだった。
「痛む?」ときくと、かすかに「うん」と言う。
俺は彼女をいたわりつつ動き、発射した。膣外射精だった。
俺は彼女のお腹の精液をぬぐい、彼女のあそこもティッシュでぬぐった。
彼女は俺にしがみついてから唇を近づけてきて、俺の唇に押し当てた。
ほてった彼女の肌が暖かく心地よく、俺は彼女を愛おしく思った。
この頃の毎日の生活は、単調だった。月曜から金曜まで、大学に行き授業の無いときは
研究室に入り浸る。とにかく一瞬一瞬が大切だった。短答式の結果は出ていなかったが、
論文の勉強を始めねばならなかった。民事訴訟法、財政学、破産法など、学ぶべき事柄は山程あった。
土曜日曜はMにバイトに入った。俺はオープニングのトレーナーだったので、朝6時半には店に入り、オープニングに合わせるために秒単位の仕事にとりかかる。
手順がきちんと行くと、一秒の無駄もなく幾つかの作業を同時並行して進めることができ、それでなければオープンには間に合わない。8時間目一杯仕事をした後、道場に向かう。
道場で3時間の稽古を行い、その頃には肉体的にくたくたになっている。
俺の心中では、Mちゃんがメインで、Sさんはただの都合の良い女性に過ぎなかった。
Sさんとはバイトで出会うが、話を交わすのはクルーのいる中だったので、ありきたりの事柄だけだった。
平日は俺が忙しくしていることをSさんも分かっていたので、無茶は言ってこなかった。ただ、電話は結構かかってきていた。俺がつめたくなったと思っているようで、そんな不安感を訴えてきたこともあった。俺は、そんな事はないと丁寧に伝えたが、心中どきりとさせられた。
短答式の結果が出た。俺は駄目だった。研究室では何人も合格していた。とりわけ、俺の友人が合格していたことが俺にはショックだった。
彼は、余り頭が良いとは俺には思えなかった。が、熱心に勉強していた。視線が真っ直ぐで、俺にはまぶしく思えることのある友人だった。
彼はその年は論文で落ちたが、一年浪人して合格し、今は裁判官をしている。
Sさんが残念会をしようと、食事に招待してくれた。彼女の自宅である。俺は気が進まなかったが、無理やりといった感じで呼ばれていった。
ご主人はいなかったが、子供達がいた。37歳の、独身と言っても不思議の無い彼女に、17歳の堂々たる兄妹がいるとは、信じられなかった。
特に妹は、Sさん似の丸顔で、整った顔立ちだった。洒落っ気はないが、もてるだろうと思った。実際蒼らしい。
話の中で、受験の話になった。2人とも優秀で、兄などは俺の高校時代よりずっとできるだろう。話は随分盛り上がり、細かい受験のノウハウにまで話が行った。
話のついでのように「Hさんに家庭教師をしていただいたらどお?」Sさんが2人に聞く。
2人はまんざらでもなさそうだったが、俺は断った。受験生にそんな余裕はない。
Sさんは「そう、残念ね」と、俺を軽くにらみつけた。
お宅をおいとました後、夜風に当たりながら軽くワインの酔いが回った頭で考えた。
その時ピンと来たのが、Sさんの意図だった。我ながら鈍いと思う。
家庭教師になれば、いつでも家に行けるし、その気になれば・・・・ということだろう。
俺にとっても都合の良い話ではあったろうが、俺は再びぞっとした。
Mちゃんのためにも、早くSさんと手を切らねばならないと、その時思った。
俺は、バイトを辞めることにした。マネージャーにその旨伝え、クルー仲間にも挨拶した。
辞めるとなったらあっさりしたものだ。休憩室を後にして、もうここに来ることはあるまいと思った。
その夜、Sさんから電話があった。怒ったような声だった。実際、彼女は怒っていたのだ。
「Mを辞めたのね」「うん、そう」
「何故、ひとことも相談してくれなかったの?」「ごめんね、反対されると思ったし、勉強が忙しいんだ」
「もう、余り会えなくなるじゃないの!」「電話で話せるじゃないか。いつでも会えるさ」
「電話だけじゃ、寂しいわ」「僕も我慢しているのだから、Sさんも我慢してくれないかな」
等々会話が続く。文字にすると大した事無いが、語気は荒く、ほとんど喧嘩腰だった。
「今度アパートに行くわ、電話だけじゃ、話にならないから」
「ちょっと待って、僕が忙しいのは、分かっているだろう?アパートには夜にならないと帰らないよ」
「別に、かまいやしないわ」
困るのは俺なんだけども、と思いつつも・・・・
「ご主人や、子供達にはどうするの?」「あなたには関係ないでしょ」
ガチャン。
俺は、研究室が閉まるギリギリまで粘っていた。自宅やアパートでは、上手く勉強できないのだ。
アパートに帰るのは、夜9時過ぎが普通だった。
真っ暗な道をとぼとぼと歩いてアパートに向かう。寂しげな感じがするが、俺はこういうの嫌いではなかった。
ただ、今回は流石に気が重かった。アパートの前にSさんがいるのではないか、などと考えてしまう。
数日後、俺はアパートで民事訴訟法の勉強をしていた。
忘れもしない、三ヶ月章著の基本書を読んでいたところだった。
三ヶ月先生のこの本は、僕が一番好きな基本書だった。行間に熱気がこもっている。
夜の10時過ぎだった。ドアがノックされた。
俺は弟だと思ってドアを開けた。弟は獣医学部に今年から入学し、時々アパートを訪ねてきていたからだ。
立っていたのはSさんだった。
「やあ」と俺は彼女を招き入れた。俺の顔は少々こわばっていたかもしれない。
彼女はツンとした雰囲気で部屋に入ってきた。それから机の上の本や資料を見つめ、
「お勉強?」「見れば分かるだろう、そうだよ」
「お邪魔かしら・・・」邪魔だよと言いたいがぐっと堪えて、俺は、
「紅茶でも入れようか」いつもは手伝ってくれるのだが、俺の姿を冷ややかに見ている。
紅茶を入れ、有り合わせのクッキーなどを皿に入れ、テーブルに置いた。
本や資料を崩さないように移動させ、彼女と向かい合っておれは座った。
「ご主人や子供達は?」「知らないわ、あなたには関係ないでしょ」
最初から戦闘モードであるのに、俺は理不尽さを感じていた。何故Mを辞めただけでこれだけ不機嫌になられなければならないのか。
別れ話は未だおくびにも出していないのに・・・
この状態で、別れ話を切り出すことはできない。何が起こるか分からない。
まず、俺はSさんを落ち着かせるために、じっくり話を聞くことにした。俺が感情的になってはいけない。
彼女は、ぷんぷんしながらも、紅茶に口をつけた。俺のとっておきのアップルティーだった。
とても香りが良い。
既に夜10時を回っている。主婦がこんな時間に、男のアパートにいるなんてどうしても不自然だ。
俺はご主人とは面識が無いが、子供達とは一飯の義理というか、親しみがある。
一体どうするつもりなのだろうか。
「私が嫌いになったのね」としばらくして切り出す。いきなり結論モードだ。
「一体どうしたのさ。ご主人や子供達は、どうしたの?」
「あなたには関係ないと言っているでしょう!それより質問に答えてよ」
「・・・嫌いになったわけじゃないさ。ただ、忙しいし、俺は疲れているんだよ」
我ながら優柔不断だと思う。
しばらく押し問答が続く。彼女の思い込みは強く、それは恐らく女性の直感力だ。
そしてそれは事実でもあるのだが、俺はこの場を上手く丸め込みたいと思ってしまった。
結論は出ているのだが、修羅場の先送りをしたわけだ。
今になって分かることがある。Sさんは、3人姉妹の末っ子で、両親から溺愛されて育ったらしい。実家はそれなりの家庭であった。
意のままにならないことがあると、ヘソを曲げる傾向がある末っ子だ。
要領は良いが、波風に弱い。俺は5人の子持ちなので、子育ての過程で気付いたことだ。実例はイヤというほどある。
また、仕事や勉強時のの聡明さや忍耐力は、必ずしも人生でのそれには結びつかない。
要は、ちやほやされて育ち、仕事でもそれなりに評価されているわがまま娘が、意のままにならない相手に腹を立てたというだけのことだ。。
ただそれは今になって分かることで、その時は彼女の反応の不思議さとどぎまぎで、俺も普通ではいられなかった。
「黙ってMを辞めたのは悪かったよ。そう怒らないで」
本当は、何故怒るのかと聞きたかったのだが、火に油を注ぎそうなので止めておいた。
やがて話はとんでもない方向へ飛んでゆく。
「あなたはいつも、私のことを愛しているって言ってくれたじゃない」
それはそうだ、セックスの時、彼女は言葉の愛撫を好んだし、「愛している」と言ってくれと、何度も俺にせがんだのは彼女の方だ。
「言ったよ」「それは嘘だったの?」「・・・いや、本当にそう思っていた」
「だったら何故、もっと一緒にいてくれないの?」おいおい・・・・
彼女の眼差しは真剣そのものだった。
「ねえ、俺は学生だよ。しかも受験生だ。海のものとも山のものとも分からない、若造だよ。Sさんを好きでも、幸せにしたりすることもできないし、申し訳ないよ」
「そんな事、気にしなくても良いの。私が面倒を見てあげるから。」
俺の背筋に悪寒が走った。
「私、あなたの愛に応えなくっちゃいけないかなと、この頃思うようになっていたの。」
俺は絶句した。
「ご主人は、子供達はどうするの。○○君、○○ちゃんが悲しむよ。ねえ、一体どうしたんだい。家庭を壊したくないといっていたのはSさんの方じゃないか」
彼女は返事をしなかった。
都合よく肉体だけを楽しめる女性だと俺が勝手に思っていたSさんだったが、そうではなかったことがはっきりした。
抱くというのは肉体のことだけにとどまらず、精神も一緒に抱くということなのだと骨身に染みて分かった。
因に、この時の経験がもとで、俺は結婚してから18年間、浮気は一度もしていない。
相手にするとしたら、プロと心に決めている。
俺は冷たい汗をかいていた。運動の心地よい汗しか知らなかった俺は、冷や汗というものが本当にあることを知った。
混乱していた俺だが、ここでの対応を間違えると、俺は人生を過つということだけは分かった。
Mちゃんをどうしようか。Sさんは真剣だ。
「そこまで思っていてくれて、ありがとう」俺の精一杯の演技だ。
俺の目の前に、Sさんの肉体がある。豊かに盛り上がった胸。細い腰。
先日まで、俺が自由にできていた身体だ。小振りだが整った顔つき。目が俺を見つめている。
紅茶が冷めてしまっている。俺は席を外し、ヤカンに水を入れ、間を取った。
落ち着け、落ち着けと俺は自分に言い聞かせた。
お湯が沸くまで時間がかかる。今まで俺と彼女は対座して座っていたが、俺は彼女の隣に座った。
対座だと、対立関係になりがちだ。隣に座って、お互いの体温が感じられるくらいの距離に身体を置く。
「哀しい思いをさせてしまったみたいだね。ごめんね」
「知らない!!!」
しばらくお互いに無言。お湯が湧き始めた。
「私が入れるわ。」勝手知ったる調子で、紅茶のお替わりを彼女が入れてくれる。
ポットにカップ4杯分くらいの紅茶ができ上がった。
もう夜11時を過ぎていた。が、彼女は帰ると言い出さない。
お互いに無言のひとときが続いた。
俺は、今までの経過を反芻したのだが、段々むかむかしてきた。
セックスの時の、女に誘導された男の言葉を真に受けて、愛されていると思い込んでいたなんて、何て馬鹿なんだろうか。
それとも、理屈にならない感情に流されてここまで来ているのか。
何れにせよ、ほとんど子供だ。子供じみていると自分で分かってやっているのなら、コンチクショウである。
急に荒々しい激情が俺を襲った。俺は彼女の腕を荒っぽく掴んだ。
彼女ははっとした目で俺を見つめる。次の瞬間、ギラリと挑発的な視線に変わった。
俺は彼女の視線から敵意に近いものを感じ、敵意に対して敵意で答える衝動が俺のうちに沸き上がった。
俺は間髪をおかず、彼女を畳の上に押し倒した。
お互いに声は出さない。ただ、押し倒されてバタバタと彼女は暴れていた。
動きは大きくはないが、力は今までに経験したことが無い程で、彼女は全力を出していたと思う。
俺の目は血走っていただろうか、と今では思う。
彼女は俺の両手を何とか止めようと、手を使って防いでいた。が、所詮女の力である。
難しいのは、服を破かないようにすることだった。彼女の両手を動かなくするために、彼女にバンザイ型を取らせて、両手首を片手で押さえた。
柔術の呼吸である。そのまま空いている片手で服のボタンを外して行った。暴れる彼女のボタンを外すのは、結構難しかった。胸のボタンが外れた。
「イヤ、止めて、ヤダ」と荒い呼吸に合わせてかすかな声が聞こえる。
彼女に掴まれている痛みはほとんど無いはずだ。痣もできないだろう。その意味で、俺は細心の注意を払っていた。
ボタンの外れたシャツの間から、豊かな胸がのぞいている。今まで何度も愛撫した胸だったが、
このような状況で見ると、改めて興奮を誘う胸だった。
シャツの間に手を入れて、ブラの上から胸を揉んだ。彼女は益々「ウグ、ウグ」とノドにこもった声を出しながら、暴れた。
次に俺は彼女にのし掛かり、自分の胴体で跳ね回る彼女の身体を押さえつけた。
上手くいった。次に俺は片足を彼女の股の間に差し込んで、足を広げさせた。
さらさらした生地のスカートだった。俺はさっとスカートをまくり上げ、ストッキングに手をかけた。
手がかかった瞬間に、俺はストッキングを引き下ろした。これも柔術の技をかけるときの呼吸だ。
敵がはっとして防御体制をとる一瞬前に、技をかけてしまう。
ストッキングを全部一度に引き下ろすことはできない。
尻の部分をむき出しにしただけだった。が、ここが外れては彼女は元に戻せない。
彼女の両手は俺が利かなくさせていたからだ。ここから俺はバタバタする足から、じわじわとストッキングを脱がせていった。
俺も片手なので、膝近くまでしか脱がせられない。俺はそこで体を一瞬入れ替えて彼女に馬乗りになり、両手でパンティーごとストッキングをはぎ取った。
彼女は一瞬両手が自由になったが、なす術もなかった。バタバタと俺の背中を叩いただけだった。痛くも何ともない。
俺は一瞬だったがはっきり見た。彼女のあそこがヌルヌルに濡れているのを。
俺が体を外すと、彼女はスカートを下ろしてあそこを隠そうとした。
俺はズボンとパンツを脱ぎ捨て、起き上がろうとする彼女を後ろから羽交い締めにし、胸を揉んだ。
俺の両足は、彼女の腰と足に絡みつき、身動きをとれなくさせていた。
彼女が身体をエビのように前後に動かすたび、俺の手と足は彼女にしっかりと絡みつく。
「ひいっ、むぐ・・・」と彼女は荒い呼吸とともにうめき声ともつかない声を上げた。
「イヤ、イヤ、止めて」と辛うじて言いながら、抵抗するが段々抵抗は弱まっていった。
スカートをたくしあげ、素肌の彼女の下半身に足を絡み付けた。
体を入れ替え、俺の太ももが彼女の股間を押さえつける。俺の太ももが彼女の愛液でぐっしょり濡れる。
そのまま彼女を俺の身体で押さえつけながら、俺は身体を沈めていった。亀頭にヌルッとした感触を感じたと思ったら、
あっという間に俺の息子は彼女の体内に沈み込んだ。
俺は動かずに、彼女の身体を押さえつけていた。バタバタ暴れる動きは、止まった。
彼女は横を向いたまま、激しく呼吸していた。俺は生意気な彼女を制圧したように思った。
彼女の表情を見つめる。最初はきつい目だったが、段々とろんとした目に変わっていった。
俺はおもむろに動き始めた。彼女は「あ、あ・・・」と言いながら乱れ始めた。
いつもの彼女だった。2人とも上半身は服を着ており、下半身だけで交わっている。その状況が、何故か刺激的だった。
彼女は「好き、好き」とうわごとのように言い始める。「ね、出して、お願い」
俺は、なるようになれと思ってしまった。Sさんはゴムが嫌いで、俺はいつも生の外出しだった。
が、今度は彼女をむちゃくちゃにしてやりたいという衝動を、俺は抑えられなかった。
「犯してやる、懲らしめてやる」と、激しく彼女の中で動き、俺はめくるめく快感の中、彼女の体内に発射した。初めての中出しだった。